4Aルート解説

4Aルート解説


目次 前話


『こうしてめでたく、アビドスの魔王は倒されました。

 お疲れさまでした。キヴォトスに新しい時代が訪れました。

 別の攻略ルートは、後日開放されます。

 それまで、どうかご歓談の程を』

 

セイア「クリアおめでとう」

ナグサ「……ええ~」

セイア「おや、不満そうだね?」

ナグサ「いやいやバッドエンドじゃないか」

セイア「最初にバッドエンドだと言っただろう? 正確にはメリーバッドエンドかな? 世界は救われたのだし」

ナグサ「何も解決してない! 死人はたくさんだし、アポピスは逃げるし、治療薬も出来てない」

セイア「そういうものだよ、これが彼女の選択の結果だ」

ナグサ「選択? 選択って何? 諦めなかったからこんなことになってしまったの?」

セイア「そうだね。もしあそこで諦めていたら、あるいは被害は少し減っていたかもしれない」

ナグサ「じゃあそっちのルートやる」

セイア「現在開発中だ。カズサがモモイを潰してしまったからね。できるまではしばらくかかるだろう」

ナグサ「なんだろう、この悶々とした気持ちは……これが殺意?」

セイア「登場人物に感情移入できるのはいいゲームの証だ。ぜひ苦しんでくれたまえ」

ナグサ「殺したい……でも殺したら別ルートが見れない。心が2つある」

 

セイア「……さて、ルート解説と銘打った以上説明しておこうか」

ナグサ「教えて」

セイア「いいとも。諦めるルートが終わってからの方が良いかと思ったが、ゲーム開発が遅れている以上、飽きさせないために少しだけ情報を先出ししよう」

ナグサ「そもそもどうしてバッドエンドになるの?」

セイア「そこからだね。そもそも諦めない、諦めるのルート分岐は既にバッドエンドが決まってしまった後の分岐になる。バッドエンドにしたくなければ、その前でなんとかしなければいけなかったのだよ」

ナグサ「え、どこ? 1人でアビドスに来たこと?」

セイア「そこも要因の一つではあるが、決定的な部分ではない。最初の分岐でアビドスに来て敗北すれば椅子にされて社会的に死んでしまうことになるが、あのルートはまだ救いがあるエンドだからだ」

ナグサ「う、うん?」

セイア「問題はその後、カズサが校舎の外壁を破壊し、シロコの脱走を許したことだ」

ナグサ「……え?」

セイア「何か気になることでも?」

ナグサ「だってシロコは本来のルートでも逃げ出しているじゃない。少し早まっただけでどうしてバッドエンドに?」

セイア「そうだね。早い段階で逃げ出せた以上、普通は全ての解決が早くなると思うはずだ」

ナグサ「そうだよ。先生も早く動けるし、本来よりも中毒者は少ない。研究の時間だって十分取れたはず。なんでこうなるの?」

セイア「本来であればホシノは徐々に砂糖を広めていって、広く浸食する予定だった。時間は彼女の味方で、急ぐ必要性はどこにもなかった。それがシロコが脱走したことで変わった」

ナグサ「捜索に力を入れるようになった」

セイア「そう。本来よりも人手が足りないから砂糖を広めるペースを早め、同時にシロコの捜索を開始した。それが砂祭り開催までのタイムリミット短縮につながった。アビドスの動きによって中毒者は爆発的に増え、各学校は対応に追われて治療薬の開発は進まず、ノアが限界に達した」

ナグサ「ノアが巡航ミサイルを持ち出してアビドスを殲滅しようとするんだ」

セイア「これによりさらにクリアまでのタイムリミットが短縮される。ミレニアムの巡航ミサイルとアビドスのサンモーハナストラ、どちらが撃たれても終わりなので、実のところギリギリだった」

ナグサ「あそこで二手に分かれたのは間違いじゃなかった?」

セイア「2人で異常強化されたホシノ相手には勝てない。勝負にならないというわけではなく、ホシノとしては時間を稼げばそれでよかったから遊ばれて終わりだった」

ナグサ「カズサのファインプレイ、なのかな?」

セイア「彼女がそれを喜ぶかどうかは別として、そうなるね」

ナグサ「複雑」

 

セイア「それで諦めないルートの最後だが、カズサはシロコを殺害、ヒナとハナコも死亡している。この際ホシノの取り憑いていたアポピスはカズサを次の宿主として決めて核を移している。最後にホシノの声が聞こえたが、これはアポピスのエミュということだね」

ナグサ「ひどい結末」

セイア「最初に殺意に支配されていた段階で殺害成功していたら、ここまでショックをうけることはなかっただろうに……その気がなくなってから殺せてしまったせいで発狂してしまった」

ナグサ「ヒナの足に絡まっていたのは?」

セイア「キャラ紹介の一文だね。ヒナ対風紀委員会の戦いの結末である『直死』を参考にしているためそちらを見て欲しい。ヒナが最後に持っていた銃の持ち主を考えると理解できるはずだ」

ナグサ「……あ~なるほど。手首から先は?」

セイア「どこかに行ったんだろうね? ちなみにこれはカズサが自爆しようとした手榴弾と同じくらいの威力だ」

ナグサ「それで手の怪我だけって、ホシノ硬いな」

セイア「だからこそカズサに怒ったんだが。まあそんな硬さも、アポピスの裏切りによって無くなった。異常な密度と硬さを体現していたホシノだが、体組成を作り変えられることでスカスカになってしまい、カズサの銃で大穴を開けた。カズサの勝利で終わったが、タイミングが良いのか悪いのか」

ナグサ「いや悪いよ」

セイア「それでカズサは発狂した。全身にホシノの血をかぶることでその臭気に紛れて砂糖の中毒が急速に進行し、現実と虚構の区別が付かなくなった。大好きな先輩と一緒に旅行している幸せな夢でも見ているだろう」

ナグサ「ままならないね」

セイア「まったくだ」

 

ナグサ「本来のルートだとシロコ捜索はしてないの?」

セイア「実はしているがその勢いは弱い。人員が十分集まっていたことで砂祭り開催を優先した。ホシノは組織のトップだからね。組織が膨れ上がる程、彼女個人の動きは鈍くなっていく」

ナグサ「なるほど……うっ、頭が」

セイア「トラウマでも刺激されたかな? アイスティーしかないけどよかったかな?」

ナグサ「いただきます」

セイア「続けよう。本来よりもリミットが短縮されたことで、反アビドス側はいくつかのステップを踏めていない」

ナグサ「治療薬開発?」

セイア「そうだ。未来への希望がなく、とりあえず目の前の脅威を除けばよいと短絡的に考えた。そしてアポピスの情報が無い。だからホシノたちを倒せば終わりになってしまった」

ナグサ「アポピスの情報ってどこでゲットするの?」

セイア「ある程度時間を掛けて先生の奮闘する様を見せることで、ゲマトリアから接触してくる」

ナグサ「ゲマトリア……先生じゃないとダメ?」

セイア「彼らは生徒個人を認識することはあまりない。大人と子供の視点の違いがあるから、生徒たちの少しの頑張り程度ではダメだ。存在を認識して交渉・契約することができるレベル、ミレニアムのリオなどは接触可能だろうが、そうでなければ面白い実験動物程度の感覚だ」

ナグサ「腹が立つね」

セイア「目くじら立てても仕方がない。先生の奔走によってゲマトリアにも手を貸した方が利益があると判断されれば、自然と接触してくるだろう。トゥルーエンドにはそのための時間が必要なのだ」

ナグサ「結局時間か……早すぎても遅すぎてもダメなんだね?」

セイア「その通り。料理でも『弱火で10分なら強火で2分で良いよね?』みたいなことにはならないだろう?」

ナグサ「時間を掛けるべき時と掛けてはいけない時がある『遠回りこそが最短の道』……本来だとよく正解にいけたね?」

セイア「だからこそ、こうしてゲームにしているのだよ」

ナグサ「納得」



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